どんなに好きになった相手でも、夫婦として一緒に暮らしていると多少のトラブルが生じるでしょう。そんなことが起こる前にちょっとした工夫で関係性を良くしたり、いざというときも上手な言葉選びで気持ちを伝えられると、きっとお互い笑顔で向き合えるようになりますよ。ここで紹介する話術の中には、患者さんへ細やかな気遣いで接するナースだからこそ、既に身についているものもあるはず。仲良し夫婦でいられるよう、家庭でもぜひ取り入れてみましょう。
育児や部下育てのポイントとして「相手の存在や行動を認め、気持ちにや意見に賛同し、優れた点を褒める」ということが言われます。シンプルに言うと「褒めて育てる」というニュアンスでしょう。夫と仲良く過ごすには、この「褒めて育てる」を少し意識するといいかもしれません。もちろん、妻が上から目線で「育てる」という意識は禁物。一緒に人生を歩んでいくパートナーへ敬意をもって共感したり褒めたりすることで、気持ちの良く夫婦の仲を育んでいけるでしょう。
例えば、夫の行動や言葉に対し「うんうん、そういう考え方もあるよね」「最近(仕事・家事・育児など)すごく頑張ってるよね」などと承認し、「その気持ちすごくわかるよ」「大変だったでしょう?」といった共感を示します。その後、「とても素敵だと思うよ」「さすが!あなたが頑張ったからこそできたんだね」など称賛してみましょう。物事によっては、さらに「すごく勉強になるなぁ~話してくれてありがとうね」「いつも気遣ってくれて、本当に嬉しいよ」といった感謝の言葉を伝えるのがオススメです。これらは、患者さんの心に寄り添う共感力に通じるものがあるかもしれませんね。
夫にとって、妻に自分のことを認めてもらえ、褒めてもらえるというのは家庭における安心感に繋がります。ひいては、夫の目線や意識も自然と妻へ向かうようになるでしょう。夫婦がお互いに思いやれる関係性を築けるはずです。
お互いに愛情をもって結婚したとしても、ときには相手に対して不満を抱くことがあります。なかには私さえ我慢すれば…と考える妻もいるでしょうが、それは夫婦として健全ではありません。不満は小さいうちに夫に伝えて解消するのが、末永く仲良くいられる秘訣です。
そこで大切なのが、自分の要望や気持ちの伝え方です。メッセージには「YOUメッセージ」「WEメッセージ」「Iメッセージ」の3パターンがあります。YOUとWEを主語にすると、「あなたが〇〇するべき」「家族が迷惑しているのはあなたが〇〇しないせい」といった夫を責める言い方になりがちです。一方、Iを主語にすると「〇〇されると、私はとても悲しい」と妻は自分の思いを素直に伝えられるため、夫も耳を傾けやすくなり、自分の行動を省みやすくなります。
人の思考や行動を変えるのは、なかなか難しいものです。そのことは、多くの患者さんと接しているナースのみなさんが、よく分かっているでしょう。患者さんにもっと食生活に留意して欲しい、不安なことは伝えて欲しいと思っていても、患者さんの性格的に難しいこともあります。その際、ナースのみなさんは「ご飯をしっかり食べてくださると、私達もとても嬉しいです」「些細なことでも声をかけてくださると、私達もすごく助かります」といった声掛けをされているでしょう。そんなナースのみなさんなら、夫婦の間でもお手の物。ぜひ「Iメッセージ」で、素直な気持ちを伝えてみてください。
人は、他人が自分について発する言葉に敏感で、ときにはその言葉に傷つくこともあります。特にダメージが大きいのが「人格否定」、その人の本質的・性格的な部分を否定されたときです。
たとえば、「だらしない」「なにもできないのね」「グズ」といった言葉は、人格否定と受け取られます。たしかに、洋服を脱ぎ捨てるのはだらしないし、料理が苦手、外出準備に時間がかかるという夫や妻はいます。しかし、その部分だけで「だらしない人」「なにもできない人」「グズな人」とカテゴライズするのは、非常に乱暴です。行動の一部に注意が必要なだけで、その人がダメな人物ということにはなりません。つい発してしまいがちな言葉だからこそ、夫婦間のみならず人間関係全般において重々気をつけましょう。
夫に対してなにか注意するときは、相手の人間性ではなく行動にフォーカスして伝えるようにしてください。それをさらに「床が散らかるから、洋服はしまってくれると嬉しいな」というふうに「Iメッセージ」にすると尚良し。
人生の大切なパートナーだからこそ、優しい言葉であたたかい関係を築いていきましょう。